麗雪神話~麗雪の夜の出会い~

『まずいな、まったくお前、もっとましなものをつくれないのか』

そう言いながらもいつもセレイアのつくったものならきれいに食べてくれた。


『ああ、支払いはこれでいい。釣りはいらない』

街中ではめったに見られない金貨を差し出された店主は、目を丸くしていた。

どこにいても目立つ人だった。金銭感覚がなくて、高いものを買いすぎて、お忍びだというのにまったく忍べていなかった。


『バーカ。人の心配ばかりしてるなよな』

遠征に行くと聞いてたまらず会いに行くと、額を弾かれた。

バカとは何よ、と強気で言い返したけれど、それでも心配だった。

『俺は俺のやり方で行く。俺はいずれ国主となる…そしてこの国に、さらなる繁栄と平和をもたらしてみせる』

いつも理想を語っていた。

『全軍、進め!』

数多の兵の先頭に立って、臆するところがなかった。

『ばーか』

そう言って笑う、その顔が大好きだった。
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