麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
終章 旅立ちの抱擁
1
ディセルはマントを羽織り、ずっしりと重い鞄を背負って鏡の前に立った。
銀色の髪の旅人が鏡の中からじっと自分を見つめ返している。
彼の表情は切なげで、寂しげで、今にも泣きだしそうだ。
それでも今日、ディセルは一人旅立つ。
お世話になったセレイアにも、何も告げぬままに。
名残惜しげに見渡せば、いつのまにかすっかり馴染んでいたディセルのための部屋がある。
今日は使用人たちに任せずに、とびきりきれいに自分でベッドを整えた。掃除もした。それがせめてもの、お礼の気持ちのつもりだった。
「…ありがとう」
誰にともなく小さく告げて、ディセルは部屋を後にした。
時刻はまだ夜も明けきらぬ早朝。
東の空が明るくなりはじめる、暁の頃合いだ。
使用人たちに出会わないようこっそりと歩き、玄関口から外へ出た。
ぴりっと肌を刺す冷気。
雪がぱらぱらと降っている。
ディセルは街への道ではなく、横道へ足を向けた。
銀色の髪の旅人が鏡の中からじっと自分を見つめ返している。
彼の表情は切なげで、寂しげで、今にも泣きだしそうだ。
それでも今日、ディセルは一人旅立つ。
お世話になったセレイアにも、何も告げぬままに。
名残惜しげに見渡せば、いつのまにかすっかり馴染んでいたディセルのための部屋がある。
今日は使用人たちに任せずに、とびきりきれいに自分でベッドを整えた。掃除もした。それがせめてもの、お礼の気持ちのつもりだった。
「…ありがとう」
誰にともなく小さく告げて、ディセルは部屋を後にした。
時刻はまだ夜も明けきらぬ早朝。
東の空が明るくなりはじめる、暁の頃合いだ。
使用人たちに出会わないようこっそりと歩き、玄関口から外へ出た。
ぴりっと肌を刺す冷気。
雪がぱらぱらと降っている。
ディセルは街への道ではなく、横道へ足を向けた。