麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「ずいぶんと早起きね」

聞こえるはずのない澄んだ高い声が聞こえた気がして、ディセルははっと息をのんだが、すぐに眉間にしわを寄せて頭を振った。

セレイアを想うあまりに、彼女の声の幻聴を聞いてしまうなんて、と思ったのだ。

しかし、ディセルの耳にはまだ彼女の声が聞こえてきた。

「でも、私たちには負けるわ。ねえ? プミラ」

彼女の声に応じるプミラの鳴き声まで聞こえてきた時、ディセルはやっとこれが幻聴などではないと気が付いた。

慌てて振り返ると、そこには―

銀色の雪景色の中、セレイアと、プミラがいた。

銀の瞳が見開かれる。

なぜ…とかすれた声が自然と零れ落ちた。

「セレイア、プミラ…その格好……」

そう、セレイアは厚手の毛皮のコートにリュックサックを背負い、腰には槍、身軽に動けそうなブーツをはいていた。プミラも背中にあれこれ荷物を括り付けていた。すなわち、彼らは明らかな旅装に身を包んでいたのだ。

まさかという思いが胸をよぎる。
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