麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「セレイア様ったら…」
頬に手を当ててため息をつくフリムがさほど困った様子ではないことから察するに、これは結構日常の光景なのだろう。
セレイアは器用なもので、するすると手足をかけて登っていく。
丁度その時、回廊の反対側からぴしっと背筋の伸びた中年女性が現れなかったら、危なげなくてっぺんにたどり着けたかもしれない。
中年女性は細いこげ茶色の瞳に、後れ毛もなく後ろで団子にまとめた同色の髪を持ち、その落ち着き払ったたたずまいは周囲の温度を下げてしまいそうな厳しい印象だ。巫女の衣に銀の帯を身にまとっていた。
銀の帯は何巫女だろうとディセルが眺めていると、セレイアが彼女に気づき、「げっ」と乙女らしからぬ声を上げた。
「何をやっているのです!」
「う…わあ、大巫女様!」
セレイアのしまったといった風の声を聞いて、ディセルは納得する。
彼女が、セレイアより唯一位の高い巫女、大巫女らしい。なるほど、頂点に立つ者の風格のようなものが、その声やたたずまいから滲み出ている。
嫁いだあとの姫巫女が大巫女と名を改めるのだというから、彼女も昔姫巫女を務めていたのだろう。
「姫巫女ともあろうお方が、木登りなどはしたない! 言語道断です! 今すぐ、降りてきなさい!」
「いや、すぐ降りろって言っても、落ちたら危ないし…わわっ」
動揺したセレイアはバランスを崩し、今にも落ちそうになる。
ディセルは非常にはらはらしたが、セレイアはきっと運動神経に優れているのだろう、うまく両手を使ってすぐに体勢を立て直した。
そしててっぺんの書類を無事手にすると、慎重に下に降りてきた。
頬に手を当ててため息をつくフリムがさほど困った様子ではないことから察するに、これは結構日常の光景なのだろう。
セレイアは器用なもので、するすると手足をかけて登っていく。
丁度その時、回廊の反対側からぴしっと背筋の伸びた中年女性が現れなかったら、危なげなくてっぺんにたどり着けたかもしれない。
中年女性は細いこげ茶色の瞳に、後れ毛もなく後ろで団子にまとめた同色の髪を持ち、その落ち着き払ったたたずまいは周囲の温度を下げてしまいそうな厳しい印象だ。巫女の衣に銀の帯を身にまとっていた。
銀の帯は何巫女だろうとディセルが眺めていると、セレイアが彼女に気づき、「げっ」と乙女らしからぬ声を上げた。
「何をやっているのです!」
「う…わあ、大巫女様!」
セレイアのしまったといった風の声を聞いて、ディセルは納得する。
彼女が、セレイアより唯一位の高い巫女、大巫女らしい。なるほど、頂点に立つ者の風格のようなものが、その声やたたずまいから滲み出ている。
嫁いだあとの姫巫女が大巫女と名を改めるのだというから、彼女も昔姫巫女を務めていたのだろう。
「姫巫女ともあろうお方が、木登りなどはしたない! 言語道断です! 今すぐ、降りてきなさい!」
「いや、すぐ降りろって言っても、落ちたら危ないし…わわっ」
動揺したセレイアはバランスを崩し、今にも落ちそうになる。
ディセルは非常にはらはらしたが、セレイアはきっと運動神経に優れているのだろう、うまく両手を使ってすぐに体勢を立て直した。
そしててっぺんの書類を無事手にすると、慎重に下に降りてきた。