麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
雪影の降り注ぐ自分の月影を踏むようにしながら歩いていくと、目印の神木が見えてきた。
白い枝、白い幹からなる樹形が美しく、桃のようにまろやかな味の純白の実をつける大樹である。
あれ、とセレイアは反射的に思った。
見慣れたはずの神木が、いつもと違うと感じたのだ。
そう、月明かりとは違う、何か淡いうすぼんやりとした光のようなものを放っているような―
神木に近づくうち、光はよりはっきりとした。
何か神がかった力を感じた。
―私でも、雪の神スノーティアスの予言を聞けるかも知れない!
セレイアは誘われるように足を速めた。
それも無理のないことだった。
セレイアは姫巫女の職を授かっていながら、姫巫女に必須とされる“神の予言を聞く能力”を持っていなかったのだから。
五歳で姫巫女の職を授かった当初は、もちろん予言を聞く能力をその身に備えていた。しかしある日突然、彼女はその力を失ってしまった。
この国において姫巫女は、民の崇拝を集め、国の威信に関わる職。
そんな彼女が能力を失ったなど、あまりに不吉。ゆえにその事実は伏され、セレイアは長いこと民を騙す自分に苦しんできた。
だから、この時、少しでも自分に力が戻る可能性があるなら、なんでもしたいと、セレイアは思ったのだ。
神木は間違いなく淡く白い光に包まれていた。
それは降る雪の中で、あまりにも幻想的で美しい光だった。
まるで懐かしい記憶のふたを開けるような切なさと、母の腕に抱かれるような安らぎを感じさせる、光。
神木の根元まで来て、セレイアは息をのんだ。
天より一条の光が舞い落ち、神木を包んでいる。そしてその光の中を、ゆったりとした速度で降りてくる影があった。
影―人影だ。
セレイアはそこに奇跡を見た。
白い枝、白い幹からなる樹形が美しく、桃のようにまろやかな味の純白の実をつける大樹である。
あれ、とセレイアは反射的に思った。
見慣れたはずの神木が、いつもと違うと感じたのだ。
そう、月明かりとは違う、何か淡いうすぼんやりとした光のようなものを放っているような―
神木に近づくうち、光はよりはっきりとした。
何か神がかった力を感じた。
―私でも、雪の神スノーティアスの予言を聞けるかも知れない!
セレイアは誘われるように足を速めた。
それも無理のないことだった。
セレイアは姫巫女の職を授かっていながら、姫巫女に必須とされる“神の予言を聞く能力”を持っていなかったのだから。
五歳で姫巫女の職を授かった当初は、もちろん予言を聞く能力をその身に備えていた。しかしある日突然、彼女はその力を失ってしまった。
この国において姫巫女は、民の崇拝を集め、国の威信に関わる職。
そんな彼女が能力を失ったなど、あまりに不吉。ゆえにその事実は伏され、セレイアは長いこと民を騙す自分に苦しんできた。
だから、この時、少しでも自分に力が戻る可能性があるなら、なんでもしたいと、セレイアは思ったのだ。
神木は間違いなく淡く白い光に包まれていた。
それは降る雪の中で、あまりにも幻想的で美しい光だった。
まるで懐かしい記憶のふたを開けるような切なさと、母の腕に抱かれるような安らぎを感じさせる、光。
神木の根元まで来て、セレイアは息をのんだ。
天より一条の光が舞い落ち、神木を包んでいる。そしてその光の中を、ゆったりとした速度で降りてくる影があった。
影―人影だ。
セレイアはそこに奇跡を見た。