麗雪神話~麗雪の夜の出会い~

そんな事件がありはしたものの、速足で歩いたおかげでほぼ定刻通りにセレイアたちは“予言の間”にたどりついた。

主殿から長い回廊で隔離された一角に、その部屋―というか建造物はあった。

外観は神殿と同じ建築様式で、尖塔のごとく尖った屋根が特徴的だ。色はまじりけのない純白で、雪そのもののような美しさを持っている。

そこだけがしんと静かで、舞う雪と青空、冠雪の木々や山々を背景に、ぽっかりと神秘の空間が開けているかのようだ。

一目見ただけで聖域とわかる。

ここは姫巫女が神より予言を聞くための聖域。

さすがに神人でもないディセルを中に入れるわけにはいかないので、セレイアはディセルに、入り口で待っていてもらうことにした。

中はからんとして広く、磨き抜かれた銀の床の上、中央に銀の祭壇があるきりだ。神との対話に、余計なものはいらないのである。

天窓からさんさんと太陽の光が降り注ぎ、予言の間は美しい白銀の光で満たされていた。

慣れ親しんだ空気。セレイアの胸に苦いものがこみあげた。

ここでセレイアは今日も、聞けもしない予言を聞くために、むなしい祈りを捧げなければならないのだから。
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