麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「はい! ディセル様! よろしくお願いしますっ」

「痛っ」

クレメントが近距離で勢いよく頭を下げたせいで、ディセルはクレメントから頭突きを食らうことになった。

周囲が一気に色めき立つ。

「クレメント! こら! なんてことを!」

「す、すみませんすみません!」

顔面蒼白になって平謝りするクレメントに、ディセルは笑って返事をした。

「大丈夫だからどうか気にしないで」

「で、でも…っ」

「クレメント。よいのですよ。ディセル様はお優しい方。その優しさに感謝する心だけ忘れることのなきように」

先頭を歩いていたセレイアの穏やかなたしなめに、クレメントが再び頭を勢いよく下げたので、ディセルは器用に避けなければならなかった。

そんなやりとりのすえにたどり着いた聖堂は、宗教画が描かれた高い円天井と、来訪者から見て正面の壁面一面に広がる大ステンドグラスが、強い印象を刻む場所だった。

確かに美しい。けれどそれよりも、荘厳といった印象の方が強いかもしれない。静寂に包まれていてなお、聖歌の吟唱がどこからか聞こえてきそうな、ひんやりとした空気を持つ空間。

ディセルはこの空間が嫌いじゃなかった。
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