麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
ディセルが右手をかざすとそこに雪の塊が生まれ、彼はそれをぽんぽんともてあそんで楽しそうにしている。

「…ディセル。それ…手品…じゃないの、よね?」

やっと出た声は、上ずって掠れていた。

「手品ってなんだ? 雪を降らすくらい、別に普通のことだと思うけど」

普通なわけがない。

「ディセル! あなたって本当に、本当に、神人なんじゃないの…っ!?」

ありえない話ではないのだ。

彼の登場の仕方を改めて考えて見れば。

しかしセレイアはどうやらその可能性をいつのまにか完全に度外視してしまっていたらしい。

なぜなら、こうして実際に会話し、接してみれば、ディセルという人は本当に人間くさかったからだ。笑いもすれば、拗ねもする。緊張もする。そんな神人などいるはずもないと、考えてしまっていた。

けれど自在に雪を操るその姿は、明らかに人間離れしている。

「明日は休みだから、急いで大図書館に行くわよ! あなたについて調べるの。ああ、本当に、神人だったりしたらどうしましょう…。いい? ディセル。みんながびっくりするから、人前でそんなふうに雪を出したりしないようにね?」

「わ、わかった」

セレイアの気迫に押され、ディセルが頷く。

彼の記憶はいまだ戻らない。ならば、調べてみるしかないとは思っていた。

ディセルのためにも、正体は知っておいた方がいい。

セレイアの頭の中は、すぐに図書館のどこから調べるかでいっぱいになった。
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