麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
木製のしゃれたドアを開けて入り口をくぐると、カランコロンと澄んだ鈴の音が鳴り、「いらっしゃいませ!」と声が掛けられた。

「フリムと二人で良く来る店なのよ。席、どこにする?」

ディセルは入り口に吊り下げられた連鈴が珍しかったらしく、手で鳴らしてみては神妙な顔つきをしている。

「窓際がいいわ。行きましょ」

ここはセレイア行きつけのカフェレストラン“オアシス”。

店内は大きな窓からさんさんと光が降り注ぎ、明るい。

そして暖炉の火で、ぽかぽかと暖かかった。

いたるところに置かれた鉢植えのグリーンは色とりどりの見事な花を咲かせ、外の雪景色からは想像もつかない、まさに雪の国の中の“オアシス”のような場所だった。

あたりをきょろきょろするディセルを連れて、セレイアは窓際の空いていた席に二人で座った。

祝日ということもあって、店内は老若男女大勢の客でにぎわっている。

「私はここのビーフシチューが好きなの! でもディセルは冷たいものの方がいいのよね。だったら、これなんてどう?」

「なになに、“鶏と大葉の旨辛バゲット”?」 

「それに、エンドウマメの冷製スープをつけるといいわ」

「じゃあ、それを食べてみるよ」

店員に注文ししばらく経つと、隣の席に見慣れた夫婦がつくのが見えた。

「あ~! フリム! クレメント!」

「セレイア様!? ディセル様も」
< 50 / 149 >

この作品をシェア

pagetop