麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「あなたは?」
身を乗り出し、無邪気に訪ねてくるセレイアという名の少女に、彼はどう返答したものかと迷った。
しかし倒れていた自分を助けてくれたのだろう彼女には、ありのままを告げた方がよいだろうと思った。
「俺の名前…なんだったか、思い出せない。
どこから来たかも、なぜそこにいたのかも、…何も」
「ええ~~~!?」
当事者である自分よりも、セレイアの方が青い顔になった。
「それってまさか…記憶喪失!?」
「そうみたいだ」
自分がこの事態にあまり焦っていないのが意外だった。
むしろなんだろう、わくわくするような、どきどきするような、妙な高揚感を感じていた。
自分が何者で、なぜここにいるのか知らないが、それは自分の意思であって、何も間違っていないのだと―そんな気がした。
少女はどうしようどうしようと青い顔で慌てていたが、はっしと彼の手を握り、元気づけるように言った。
「だ、大丈夫よ。きっと一時的なものだわ。落ち着けば、きっと色々なことを思い出していけるはずよ。私に教えられることなら、なんでも教えるし。落ち着くまで、好きなだけ、ここにいていいのよ」
そう言われて、彼ははじめて室内に目を走らせた。
木のぬくもりにあふれた家具調度に、赤い格子柄の布があちこちに掛けられている。温かみのある部屋だ。それに、部屋の中央の暖炉で火が燃えていて、とても暖かい。
「…ここは?」
「私の家よ。部屋はいっぱい余っているから、遠慮しないでね」
「セレイア…さん」
「セレイアでいいわ」
「俺が倒れていたっていうその神木は、ここから近いの?」
「すぐそばよ」
「俺をそこに連れて行ってほしい。
何か…思い出せるかもしれない」
「お安い御用よ! でも、いきなり動いて大丈夫?」
「ああ」
体には特に痛みも疲れもなく、彼は危なげなくベッドから起き上がり、立ち上がることができた。
身を乗り出し、無邪気に訪ねてくるセレイアという名の少女に、彼はどう返答したものかと迷った。
しかし倒れていた自分を助けてくれたのだろう彼女には、ありのままを告げた方がよいだろうと思った。
「俺の名前…なんだったか、思い出せない。
どこから来たかも、なぜそこにいたのかも、…何も」
「ええ~~~!?」
当事者である自分よりも、セレイアの方が青い顔になった。
「それってまさか…記憶喪失!?」
「そうみたいだ」
自分がこの事態にあまり焦っていないのが意外だった。
むしろなんだろう、わくわくするような、どきどきするような、妙な高揚感を感じていた。
自分が何者で、なぜここにいるのか知らないが、それは自分の意思であって、何も間違っていないのだと―そんな気がした。
少女はどうしようどうしようと青い顔で慌てていたが、はっしと彼の手を握り、元気づけるように言った。
「だ、大丈夫よ。きっと一時的なものだわ。落ち着けば、きっと色々なことを思い出していけるはずよ。私に教えられることなら、なんでも教えるし。落ち着くまで、好きなだけ、ここにいていいのよ」
そう言われて、彼ははじめて室内に目を走らせた。
木のぬくもりにあふれた家具調度に、赤い格子柄の布があちこちに掛けられている。温かみのある部屋だ。それに、部屋の中央の暖炉で火が燃えていて、とても暖かい。
「…ここは?」
「私の家よ。部屋はいっぱい余っているから、遠慮しないでね」
「セレイア…さん」
「セレイアでいいわ」
「俺が倒れていたっていうその神木は、ここから近いの?」
「すぐそばよ」
「俺をそこに連れて行ってほしい。
何か…思い出せるかもしれない」
「お安い御用よ! でも、いきなり動いて大丈夫?」
「ああ」
体には特に痛みも疲れもなく、彼は危なげなくベッドから起き上がり、立ち上がることができた。