麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
近づくと、雲の切れ間の弱い月明かりで横顔が見えた。

セレイアは腕を祈りの形に組み、目を閉じてなにごとか祈っているようだ。

その時、ディセルは気が付いた。

彼女の頬を伝う、一筋のきらめく涙に。

動転し、ディセルは思わず大声を上げた。

「セレイア!? 一体どうしたんだ! 泣いて…――」

「え? ディセル?」

セレイアは振り向き、驚いたように目を見張る。

やはりその瞳からは、透明な涙がこぼれている。

セレイアはそれを拭おうともしないまま、心底から驚いたように声を上げる。

「どうしたの、こんな時間に」

それはこっちが聞きたい。

「なんで泣いているの? 何か辛いこともでもあったの?」

「泣く? 私、泣いてなんか…あ…」

そこではじめて、セレイアは自分の涙に気づいたようだった。

「変ね……ごみでも入ったのかしら」

と言って、ごしごしと目をこする。

その様子が痛々しくて、ディセルはきゅっと胸が痛んだ。
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