麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「セレイアは…ヴァルクス王太子殿下のことが、好きなのか?」

「え?」

セレイアはぱっと頬を朱に染め、恥じらうように目を伏せて、答えた。

「え…と…なんでそんなこと聞きたいのかよくわからないけど…。

ええ、好きよ。恋人なの。誰よりも大切な人よ」

「…………」

“誰よりも大切な人”…。

ディセルは、そっと目を閉じた。

聞かなきゃよかったと、激しい後悔が胸の中を渦巻く。

彼の激情に合わせるように、中庭を激しい風が吹き荒れた。

徐々にその風に雪が混じり、あっというまに吹雪となる。

近距離にいたはずの、セレイアの姿が見えないくらいに。

―これで涙を見られずに済む。

「ディセル! ディセル! どうしたの!?」

突然の吹雪にとまどうセレイアの声に背を向けて、ディセルは失恋の痛みと共に歩き出した。

どこへ向かうかなど、わからずに。
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