麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「私の家は代々建築家で、父は柱職人でした。
幼い頃から建築のいろいろなことを父から教わり、何の疑問も抱くことなく、私も建築の道に進みました。
目標もなく、志もなく、ただ食べていくのに必要だから仕事をして、なんとなく日々を過ごしていたんです。
そんな時出会ったのが、彼女―フリムヴェーラでした」
柱職人として、白銀の神殿の柱の修繕の仕事に赴いた、19歳の時のことだった。
柱の状態をチェックしていると、不意に「てあ~!」という掛け声とともに突進してくる少女がいた。
クレメントは避けようと思ったが間に合わず、二人は盛大に激突してしまった
よくよく見れば彼女の手には雑巾が握られており、ただ突進してきたというより、気合を入れて床掃除をしすぎていて周りが見えなかったのだとわかった。
「ご、ごめんなさい、お嬢さん」
クレメントがとりあえず謝ると、少女は申し訳なさそうな、泣きそうな顔になった。
「わたくしの方こそ、ごめんなさいですわ!」
素直な言葉と澄んだ声が、クレメントには好ましく感じられた。
彼女こそ、15歳のフリムヴェーラだった。
「これから柱を削るので、床掃除は危ないですよ?
それに粉が落ちるから、今拭いても無駄になってしまいます。
今日中には終わらないかも知れないので、床掃除は明日にしたら―」
「いいえ!」
少女ははっきりとした声で断じた。
「作業が終わるのをお待ちして、それから床掃除をいたしますわ」
「え、それじゃあ何時間待つことになるか…」
「平気です。だってそれが、私に与えられた仕事なんですもの!」
にっこりと笑ってそう言ってのけた彼女に、クレメントは驚いた。
そして本当に真夜中まで待っていて、見事に床掃除を終えてみせたのには、驚くを通り越してとても興味を持った。
惹かれたのだ。強く。
幼い頃から建築のいろいろなことを父から教わり、何の疑問も抱くことなく、私も建築の道に進みました。
目標もなく、志もなく、ただ食べていくのに必要だから仕事をして、なんとなく日々を過ごしていたんです。
そんな時出会ったのが、彼女―フリムヴェーラでした」
柱職人として、白銀の神殿の柱の修繕の仕事に赴いた、19歳の時のことだった。
柱の状態をチェックしていると、不意に「てあ~!」という掛け声とともに突進してくる少女がいた。
クレメントは避けようと思ったが間に合わず、二人は盛大に激突してしまった
よくよく見れば彼女の手には雑巾が握られており、ただ突進してきたというより、気合を入れて床掃除をしすぎていて周りが見えなかったのだとわかった。
「ご、ごめんなさい、お嬢さん」
クレメントがとりあえず謝ると、少女は申し訳なさそうな、泣きそうな顔になった。
「わたくしの方こそ、ごめんなさいですわ!」
素直な言葉と澄んだ声が、クレメントには好ましく感じられた。
彼女こそ、15歳のフリムヴェーラだった。
「これから柱を削るので、床掃除は危ないですよ?
それに粉が落ちるから、今拭いても無駄になってしまいます。
今日中には終わらないかも知れないので、床掃除は明日にしたら―」
「いいえ!」
少女ははっきりとした声で断じた。
「作業が終わるのをお待ちして、それから床掃除をいたしますわ」
「え、それじゃあ何時間待つことになるか…」
「平気です。だってそれが、私に与えられた仕事なんですもの!」
にっこりと笑ってそう言ってのけた彼女に、クレメントは驚いた。
そして本当に真夜中まで待っていて、見事に床掃除を終えてみせたのには、驚くを通り越してとても興味を持った。
惹かれたのだ。強く。