麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
クレメントが帰った後、ディセルは彼の言葉の意味をじっくりと考えてみた。

自分にも、運命の女性がいるという。

それは誰なのだろう。

セレイアとの出会い…それはクレメントにとってのフリムとの出会いのように、特別なものだったのだろうか。

もし、そうでないなら、自分にもこれからそういう出会いがあるのだろうか。

セレイア以外の女性との…

「…考えられない」

ぽつりとつぶやいた言葉は、静かな部屋に大きく響き渡った。

考えられないのだ。

はじめて彼女を見た瞬間から、きっと自分は恋に落ちていた。

はじめて彼女を見て、“希望だ”と思った瞬間から。

「…ありがとうクレメント」

自分の答えは、はっきりしていた。

そう思うと、胸にすとんと落ちてくるものがあった。

愛する人の幸せを願う心だ。

愛しく想う気持ちを消せないのなら、彼女の幸せのために、自分ができることをしよう。

とりあえず部屋に閉じこもって心配をかけるのはやめだ。

そして、ヴァルクス王子が本当にセレイアを任すに足る男なのか自分で見際め、そうでないなら、振り向かせたい。

まだ諦めたくない。

ディセルは立ち上がった。

その銀の瞳には、数日ぶりに強い輝きが宿っていた。
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