麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「…泣くなよ…別に、俺は、お前を嫌いになったわけじゃない」
「ひっく、じゃあ、ひっく、なんで、避けるのよ。私は、ヴァルクスと、一緒に、いたいのに…」
ヴァルクスは嘆息した。
「お前は…無自覚にそういうことを言うから…。
お前は幼すぎるんだ。理由があるとしたらそれだ」
「子供だから、子供だから一緒にいたくないの?」
「そうじゃない」
ヴァルクスは不意に真剣な瞳でセレイアをみつめた。
「婚約して、何年経つと思う? 9年だ。
お前はそろそろ、俺の気持ちが聞きたくならないのか?」
「気持ち…?」
不意に唇にやわらかな感触が落ち、セレイアは目を見開いた。
ヴァルクスの前髪の感触や吐息の近さで、セレイアは気が付く。
今のは…
口づけではないかと。
「好きだ」
ヴァルクスは短くそう告げて、自らが濡れるのも構わずセレイアを抱きしめた。
その抱擁は短いものだった。
ぎゅっと強く抱きしめて、すぐにぬくもりが離れる。
「風邪をひくぞ。今、着替えを用意させるから、待っていろ」
呆然と、言葉もなく立ち尽くすセレイアを残して、ヴァルクスは去った。
そのあとのことは、あまり記憶にない。
どうやらちゃんと着替えて、温かい飲み物をもらって、ヴァルクスに付き添われ、屋敷に帰ったらしい。
らしい、としか言えないのは、その日だけでなく、それから数日もの間、セレイアが何も手につかずぼーっとして過ごしたからだ。
「ひっく、じゃあ、ひっく、なんで、避けるのよ。私は、ヴァルクスと、一緒に、いたいのに…」
ヴァルクスは嘆息した。
「お前は…無自覚にそういうことを言うから…。
お前は幼すぎるんだ。理由があるとしたらそれだ」
「子供だから、子供だから一緒にいたくないの?」
「そうじゃない」
ヴァルクスは不意に真剣な瞳でセレイアをみつめた。
「婚約して、何年経つと思う? 9年だ。
お前はそろそろ、俺の気持ちが聞きたくならないのか?」
「気持ち…?」
不意に唇にやわらかな感触が落ち、セレイアは目を見開いた。
ヴァルクスの前髪の感触や吐息の近さで、セレイアは気が付く。
今のは…
口づけではないかと。
「好きだ」
ヴァルクスは短くそう告げて、自らが濡れるのも構わずセレイアを抱きしめた。
その抱擁は短いものだった。
ぎゅっと強く抱きしめて、すぐにぬくもりが離れる。
「風邪をひくぞ。今、着替えを用意させるから、待っていろ」
呆然と、言葉もなく立ち尽くすセレイアを残して、ヴァルクスは去った。
そのあとのことは、あまり記憶にない。
どうやらちゃんと着替えて、温かい飲み物をもらって、ヴァルクスに付き添われ、屋敷に帰ったらしい。
らしい、としか言えないのは、その日だけでなく、それから数日もの間、セレイアが何も手につかずぼーっとして過ごしたからだ。