星の降る街
ガラガラ〜。
『ただいま戻りました〜あぁ、いい匂い！』

引き戸を開けると途端に嗅覚を刺激する香りに空腹の絵理香は誘われるまま、玄関横のドアを開ける。

そーっと覗き見ると、弥生さんがテーブルに食器を並べているところだった。どうやらこの部屋はダイニング兼リビングになっているようだ。

『ん？あら、絵理香ちゃんおかえりなさい。』

絵理香の視線に気づいた弥生はにっこりと笑みを浮かべる。

『ただいま…です。』

盗み見を見つかったことで少し気恥ずかしい気持ちになりながら、更にドアを開けると部屋に入る。

『ふふ、お腹空いたでしょ？もう出来上がるからね！』

テーブルの上には、魚の煮付けやお刺身、あら汁など海が近いだけに新鮮な魚介類が空腹を擽るような香りとビジュアルで盛り付けられている。

『わぁ〜！すごいっ‼︎』

絵理香は目を輝かせて、素直にその感動を伝える。その様子を弥生はにこやかに見守る。

『ホント楽しみだなぁ…あれ？でもこれって一人分？』

たくさんの皿が並べられているものの、それはどれも一人分くらいの量になっていることに気づく。

『そうね…今の時期はお客さんは少ないから。暫くは絵理香ちゃんだけになっちゃうかな。』

弥生は申し訳なさそうに空になったお盆を抱えながら説明する。
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