星の降る街
『先輩すいませんっ!涼太先輩私の方が魅力的だって言ってくれたので。…悪く思わないでくださいね?』

全く悪びれた様子もなく、見せびらかすように薬指を輝かせる後輩に何とも表現出来ないような気持ちになる。

(私…この子より中身からっぽな訳?)

幸せそうに皆に祝福される二人を絵理香は無表情で見つめる。同期の女友だちたちは口々に絵理香を擁護してくれた。

『なにあの女!田城くんも馬鹿よね、別れて正解だよ!』

『うん…。』


そんなある日、トイレの個室に入っていた時に数人のグループが化粧直しにやって来た。

『でもさー、絵理香ざまーみろだよね。』

『分かるっ!前々から自分は私たちとは違うのよって感じで気分悪かったのよね。』

『田城くんもそんな女より素直な若い子の方が良かったんじゃない?』


『……。』

笑い声が聞こえなくなった頃、個室のドアを開ける。悪いことをした訳ではないが、何となく周囲を確認すると静かに溜息をついた。

『はぁー。何かバカみたい…。』

目の前の鏡に映る自分は今まで何をしてきたのだろうか?

勝手に築き上げてきたと思っていたものは幻だったのかもしれない。

絵理香は心身共に疲れ果てた自分にこれ以上「頑張れ!」とはとても言えなかった。
< 7 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop