星の降る街
『う〜んっ!よいしょっ。』

絵理香は窓を閉めると両手を天井に向かって精一杯伸ばし、背伸びをする。

『まだ夕食まで時間もあるし、散歩でもしようかな。』

部屋の掛け時計の時間を確認すると、まだまだ余裕があることに気づき、最低限の物を持って部屋を出ることにした。


トントントン…。
『ん?あら、絵理香ちゃんお出かけ?』

階段を降りていくと弥生さんと出くわした。

『あ、はい。ちょっと近くを散策してみようかと…。』

『ふふ、気をつけて。まだまだ肌寒いから日が沈む前には帰って来てね!』

『はーい。』

絵理香は頷きながら答えると「みさき」を出た。

『ん?何だか早くも弥生さんの雰囲気にのまれてないか?…ま、いっか。』

顔を合わせて間もないが家族のように接してくれている弥生さんに流されている自覚を持ちつつも、それは絵理香に温かい感情を与えてくれているようで既に嬉しく感じるようにすらなってきた。


絵理香は駅の方ではなく、海岸に降りていく道を周りを見回しながら歩いて行く。

砂浜に降り立つと絵理香の高いヒールでは到底歩きにくく、周りに誰もいないことを確認すると絵理香は思い切ってヒールを脱ぎ、左右の手に摘むように持ちながら寄せては返っていく波の瀬戸際まで歩みを進める。
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