魔女の瞳Ⅱ
目を閉じ、呼吸を整える。

正直ダメージは深かった。

治癒魔術を行使したい所だが、生憎と『再生』の魔術と治癒魔術は、いわゆる『重ね掛け』はできない。

というか、治癒魔術は『再生』以上の効果はないのでかける意味がないのだ。

魔術とて万能ではない。

これ程の重傷が一瞬で治るような都合のいい魔術など存在しない。

存在したとしても、それは必ず万能ゆえの大きな代償を払わなければならないものなのだ。

…それにしても。

体を休めながら、クリスの事を思い浮かべる。

あんな手強いエクソシストは初めて遭遇した。

私に対する復讐心とエクソシストとしての高い意識が、あれ程の強力な祓魔師を生み出したのだろう。

…やはり人間は嫌いだ。

憎悪と復讐心だけで、魔女をも脅かすような力を持つのだから。

こんな恐ろしい生き物に比べれば、教会が言う所の『異端者』など可愛いものだ。

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