魔女の瞳Ⅱ
目を閉じ、軽く自嘲する。

まぁ今更考えても詮無い事だ。

そんな事よりも今考えるべきは、この窮地をどうやって乗り切るかだ。

…ここは自分もダメージを受けるのを覚悟で、殺傷系魔術でクリスを攻撃するしかないだろう。

何度も攻撃していては私もダメージが蓄積してしまう。

できるならば一撃で大きなダメージを与えられる魔術がいい。

クリスも障壁を持っているから、生半可な魔術では無効化されてしまう。

…まぁ、障壁だろうがどんな術だろうが、完全に無視してこちらのペースに持ち込める切り札もない事はないが…。

私は自分の胸に手を当てた。

禁呪・異界開門。

禁呪さえ使えば、どんな状況からでも逆転する自信はある。

ただ、これもまた『限定』の魔術が足枷になる。

禁呪は行使すれば確実に相手を死に至らしめる。

人間の命を奪ってしまった時、今の私にはどんなペナルティが科せられるのか。

六百年前は耐え難い激痛が延々続いたが、二度目の今回はその程度では済まないような気がする。

今度こそ、私自身も命を落としてしまうのではないか。

…死は覚悟していたつもりだった。

人間の支配するこの世になど、もう未練はないつもりだった。

だが、いざ決断を迫られると決意が鈍る。

私はまだ、生きていたいのだろうか。

人間の何倍も既に生きている。

六百年という、永劫にも近い時を生き続けておきながら、私はまだ死にたくないのだろうか…。

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