魔女の瞳Ⅱ
ボトリと。

私の腕が路地に落ちる。

「ちょうどいい。腕は奪っておこうと思っていた」

クリスは冷静に言う。

「禁呪…だったかな。デッドゲイトの切り札は」

「!」

私は心臓を鷲掴みにされた気分だった。

こいつ…禁呪の事を知っている!?

「何を驚く必要がある。お前の事は調べてきたと言っただろう?過去のデッドゲイト家の記録も紐解いて、ありとあらゆる情報を仕入れてきたさ…」

そう言ってクリスは眼鏡を指で押し上げた。

「異界開門…発動すれば確実に敵を死に至らしめる『死の門』…まぁお前とて馬鹿ではない。人間相手には使わないと思うが…念の為だ。こちらからは貫通系の攻撃はもう加えないし、自分で紋章を貫く事ができないように、腕も奪っておこうと考えたのだ」

…この男が私の右腕を切断したのは、嬲り殺しにする為ではない。

異端者殲滅専門職として、確実に私を排除する為。

一分の危険要素も残す事なく、確実に異端者である私を葬り去る為の、重要な一手だったのだ。

「さぁ」

クリスは右の手刀を構える。

「そちらの腕ももらおうか!!」

再び突進してくる、黒衣の祓魔師!!

「くっ…!!」

最早まともに動かない左腕だけど、こっちまで奪われたら、本当に私に勝機はなくなる。

呪眼に魔力を通し、地面を走る氷の波をイメージする。

「        !!」

行使したのは『氷結』の魔術。

地面ごとクリスの両足を凍りつかせ、動きを封じる!


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