魔女の瞳Ⅱ
私の目前まで来たクリスが、瓶の蓋を開ける。

そしてその瓶を、私の頭上で傾けようとしたその時だった。

「待てよ」

人払いの結界で、私とクリス以外は誰もいない筈のこの場所。

にもかかわらず、クリスの行動を制する声がした。

「……」

黙って振り向くクリス。

そこにいたのは。

「メグを殺すのはちょっと待ってくれ」

修内太だった。

走ってここまで来たのだろうか。

酷く呼吸が乱れている。

「…修内太君」

クリスが冷静な目で修内太を見る。

「どうしたんだい…一般人の君がこんな場所に来ちゃいけない。それともまさか…」

クリスの瞳術封じが夕日を反射する。

「四門メグを…この魔女を助けに来た…なんて馬鹿げた事は言わないだろうね…?」

「…!」

両腕を奪われ、血まみれになって跪いたまま、私は修内太を見る。

もう諦めた筈なのに。

彼とは別離を覚悟した筈なのに。

この期に及んで、期待してしまう自分がいた。

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