WHY
まじまじと、見ていた私を”あいつ”は睨みをきかしてきて、いよいよ近寄ってきた。
腕を強くひっぱり、体を近づけ、ぐいっと力任せに私を抱き寄せた。
あまりにの出来事に、気絶しそうになったけど、何とか気だけはしっかりとと思っていたので、そこで耐えた。




そして、初めての…キスをした。
したというより、強引にされた。こんな形でのキスは絶対に嫌だ、そう拒絶反応を起こしたのか、私はひどく震えた。その震えは、当分収まらずにいた。それを察したのか、”あいつ”は行為をとめた。

苦い味が口の中充満に広がり、淡い思い出も何もない。辛い出来事に、涙がこぼれた。


キスをして、涙をする。嬉しくてじゃない、悲しくて、悔しくて、心の涙だった。
そうして、そこで私は強引に腕を放し、その場を立ち去った。別に逃げる必要なんてない、でも逃げたかった自分から。

又だ…いつまで続くんだろう、こんな事。




 教室への帰り道、自然と職員室の前の廊下を歩いていた。いつも、何気ない相談をしてくれる、”あの人”の元へ。笑顔で話を聞いてくれて、うんうんとうなずいてくれるそんな優しい先生の元へ。
でも、丁度その時は授業らしく、居なかった

 

トイレは駆け込み、顔を洗い、平然とした表情で明るい声と一緒に、教室へと戻った。




みんなは、ちらっと私のほうを見ただけで、直ぐ様英語びっしりの黒板に目を移した。誰でもさっきの事なんて知らない。知らなくて当たり前、そんなんを知れたら、ここには居られない。黙っておこうと、思った第2の出来事。
誰かにしゃべれば楽になるが、その分誰かを悲しませる結果になる。そう信じていた。今でも変わらぬ、私のこだわり。
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