WHY
日も沈み、もう周りは暗くなっていた。帰りは、丁度学校の前を通る。



 この時間だというのに、体育教官室だけは、あかりが付いていたので、



 おそる、おそる覘いてみる事にした。久下先生に、次回の練習試合の確認を



 したかったからだ。

 
 まさか、”あいつ”がいるとも知らないで…




 こんばんわと目の前には、弱りきった表情でこっちを見る”あいつ”だった。




 「おまえ、何しているんだ…。」




 「えぇっ、久下先生に用事がありまして。」

 





 一気に前の様に凍りついた。動けなくなる感じだ。






 「この間、お前内にこなかっただろう。何かあったのか?」



 「えぇ~ちょっと用事がありまして…。」



 
 嘘をついた。



 行くことも知らずに、私は家を出たので、丁度良かったのだ。



 それにしても、前みたいに動物的な目をしていない、今はかなり疲れきっている



 様子で、その様は逆に警戒心をあおった。



 
 体とかの気遣いをしてしまうと、また弱さをだす。ここは強気で行きたいが、



 ”あいつ”の前では、猫ににらまれねずみ状態になることが非常に悔しかった。



 
 「そっかぁ~うちの奴が退院してなっ、それでお前のお母さんに退院祝いしてもらったんだ。



  うれしそうだったなぁ~、あいつ…。」




 すこしさびしげに言う”あいつ”がなんか、憎らしい。




 同情でも浴びさせてもらいたいのか、そんな様子だというより、自分の気持ちがそう思えた。

 
 何もかもの言動に、警戒をし、張り詰めた空気のこの空間から逃げ出したい気分に一層



 駆り立てられた。

 


 
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