まっしろな遺書
 美穂は、ずっと元気がない。
 心配になった十三は、美穂に声をかけた。

「大丈夫か?」

「ありがとう」

 美穂は、小さく笑った。

「どうしたの?
 顔、今にも泣きそうだよ」

「さっきの人つらそうだった……」

「そうだね……
 それで、美穂まで悲しそうな顔をしているの?」

「うん……
 変かな?」

「変じゃないけど……
 美穂って、そんな泣き虫だったっけ?」

「お姉ちゃんにもよく泣き虫って言われたな……」

 美穂が、呟く。

「あれ?美穂ってお姉ちゃんいるの?
 双子の妹さんがいるとは聞いていたけど……」

 十三がそう尋ねると美穂は慌てて言葉を訂正した。

「あ。うん。
 妹だった……」

「そっか」

 十三は不思議に思ったがそれ以上追求しなかった。

「仕事行くね」

 美穂はそう言ってベッドを服を着替えようとした。

「え?ここで着替えるの?」

「え?」

 十三の答えに美穂は苦笑いを浮かべる。

「えっと、私の裸は見慣れていると思うけど……」

 しかし、十三は美穂の裸なんて見たことない。
 だから、十三は後ろを向いた。

「もういいよ」

 十三が、振り向くとそこにはスーツ姿の美穂がいた。

「スーツ似合うね」

「ありがとう」

 十三は、はじめて美穂のスーツ姿を見た。
 普段はTシャツにハーフパンツなど少しだらしのない服装ばかりだった。

「じゃ、行ってくるね。
 死んじゃダメだからね!」

 美穂は真剣な眼差しで十三を見た。

「死なないよ」

 十三がそう言うと美穂は小指を出した。

「じゃ、ゆびきりね」

 十三は、言われる通りに美穂とゆびきりをした。
 美穂は、ニッコリと笑ったあと部屋を出た。
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