まっしろな遺書
 2015年5月9日


 君は誰とキスをする?
 私それともあの子?

 そんなBGMが、十三の頭のなかに流れる。

 十三は緊張していた。
 いつもなら、子供たちとバケモンして遊ぶのだろう。
 だが、今日は違う。

 今日は、夢叶さんとその彼氏に会う日だ。
 ロービーにて、十三と山本は、夢叶とその彼氏を待っていた。

「すまないね。
 こんなことに十三君を巻き込んでしまって……」

 山本は、そう言って申し訳なさそうに頭を下げた。

「本当に申し訳ありません」

 山本さんの奥さんの恵子(けいこ)も頭を下げる。

「いえ、気にしないでください。
 どうせ、俺は暇人ですし……」

「ありがとうございます」

 恵子が、ニッコリと微笑む。
 暫くすると、夢叶と彼氏が、ロビーにやってくる。

「お父さん、こんにちは」

 夢叶が、そう言うと彼氏は、頭を下げる。

「こんにちは、お父さん」

「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないよ」

 山本さんが、そう言う。
 このセリフ、本当に言う人いるんだ……
 十三は、そう思ったが目が笑っている山本を見て少し安心した。

「お父さん、そう言う冗談止めてよね。
 彼、本気にしちゃうタイプなんだから!」

「え?冗談?」

 彼氏は、そう言って目を丸くさせる。

「すまないね。
 このセリフ一度言って見たかったんだ」

 山本が、そう言って笑う。

「い、いえ……」

 彼氏は、そう言って俺の方を見る。

「俺は、詩空 十三です。
 山本さん、お父さんの友人です」

「じ、自分は、小山 学!
 刑事です」

 学さんは、敬礼をする。
 俺も思わず敬礼した。

「十三さんも刑事ですか?」

「いえ、俺は、しがないニートです……」

「そ、そうですか」

 学さんは、申し訳なさそうに謝った。
 そうして、5人の不思議な面談がはじまった。
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