まっしろな遺書
 2015年5月22日


 十三は、昨日の夜手術した。
 がんけい下垂と言う目の手術。

 今の十三の瞼には、糸がついている。
 いつもより早く目が覚めて、俺は調理室に向かった。
 形も悪いが、まずソースを極めることにした。

 十三は、たこ焼きソースをいくつもいくつも作った。

  これも違う。
  あれも違う。

 いろいろ試行錯誤しながら作った。

 美穂が来る。

「抜け駆けずるいぞ」

 美穂が、そう言って十三の横に立つ。

「あ、美穂おはよう」

「うん。
 おはよう、十三」

「ソースの味見してくれないか?
 何かヒントが、欲しいんだ」

「いいよ」

 美穂が、ソースの味を見る。

「ちょっと辛いね」

「うん。
 じゃ、これはどうかな?」

 十三は、はちみつを少しソースに足す。

「今度は甘い……」

「うーん。
 どうすれば、山本さんの味に近づけるのだろう?」

「別に山本さんの味にしなくてもいいんじゃないの?」

「え?」

「十三は、十三の味を作ればいいんだよ」

「うーん。
 それじゃダメな気がするんだ」

「どうして?」

「山本さんが、調子が悪いの知ってるだろ?」

「うん」

「山本さんの娘の夢叶さん。
 26日に結婚式をするんだ。
 だから、その時に山本さんの味を再現したいんだ」

「うーん。
 山本さんの為にやってるの?」

「自分の為でもあるよ。
 たぶん、これは自己満足だと思う」

「そっか……
 じゃ、頑張ろう!
 私も手伝う!」

 美穂も色々アイデアを出した。
 果物を入れてみたりもしたが上手くいかなかった。
 そうして、十三の1日が過ぎていった。
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