まっしろな遺書
 2015年5月24日


 外は雨。

 だけど、今の十三には関係ない。
 たこ焼きをひたすら作った。

 そして、沢山作りすぎた。

 病院の看護師や子供たちも事情を知っているので、喜んで食べてくれるが……
 十三は、たこ焼きを沢山作ると美穂を連れて外出許可を貰い外に出る。

「ねぇ、何処に連れて行ってくれるの?」

「俺の友達の家だよ」

「え?」

 美穂が目を丸くさせて驚く。

「どうした?」

「もしかして、婚前のあいさつ?」

「違うよ。
 昨日会った、太郎のところに持っていこうと思ってね」

「そっか……」

「萌ちゃんにもお供えしたいと思って」

「ふーん」

「まぁ、すぐそこだから……」

 十三は、そう言って喫茶店の前に立つ。

「ここ?
 喫茶萌萌ってあるけど……」

「うん。
 萌ちゃんのお父さんの代からあるお店だよ」

「そっか……」

 十三は、静かに萌萌のドアを開ける。

「いらっしゃ……って、十三さんじゃないっすか!
 来てくれたんっすか?」

 太郎が嬉しそうに十三の方を見る。

「ああ。
 今日はたこ焼きを持ってきたんだ。
 俺のお手製だぞ」

「それは、楽しみっす」

「あ……十三さん」

 桃が、そう言って十三の方を見る。

「桃ちゃん久しぶりだね」

「……うん」

「たこ焼き持ってきたよ。
 食べるかい?」

「うん!」

 桃が、大きく頷いたのでたこ焼きをひとつ渡した。
 桃は、それを頬張ると嬉しそうに笑う。

「美味しい!」

 その笑顔が、何よりも嬉しかった。
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