まっしろな遺書
 外に出た。
 雨が降る。
 唯の雨じゃない。
 土砂降りだ。
 散歩は明日に延期だな……
 十三は、そう思って部屋に戻りぼーっとして一日を終えた。
 そして、再び目を開けたとき。
 朝が来ていた。
 そして、見知らぬ若い女の看護師が立っていた。

「おはようございます。
 おめざめのようですね」

「うん」

 若い看護師は、慣れた手つきで十三の腕に点滴をさした。

「上手ですね」

 素直な十三の意見に看護師は尋ねた。

「そうですか?」

「はい。
 いつもの看護師さん、点滴をうつのが下手なんですよ」

「千代田さんが……ですか?」

「そう言えば、名前は知らないや……」

「はい。
 詩空さんの担当は、私と千代田さんですから」

「そうなの?」

「ちなみに私の名前は、春雨千春。
 気軽に千春ちゃんって呼んでくださいね!」

「あ、はい……
 じゃ、俺のことも下の名前で呼んで下さい」

「はい。
 よろしくお願いします」

 千春はニッコリと笑い言葉を続けた。

「では、散歩に行きましょう!
 今日は昨日と違っていい天気ですよ」

 十三は、点滴を見るともうすでに全部落ちていた。

「そうだね。
 散歩に行こう」

「はい」

「千代田さんは今日は休み?」

「はい。
 実は、私、昨日まで姉と旅行に行っていたんですよ」

「そっかー
 どこに行ってきたんですか?」

「ハワイです」

「おー
 海外……
 看護師さんってやっぱ儲かるの?」

「姉が医師をしているので、ほとんど姉に費用をだしてもらいました……」

「お姉さん、医者なの?」

「はい。
 この病院で、小児科と外科を兼ねているので、結構忙しいみたいです」

「そうなのか……」

「双子なんですけど、差がつくばかりで少し悲しいです」

「看護師さんも立派な仕事だよ」

「ありがとうございます」

「いえいえ」

「さて、そろそろ部屋に戻りましょう」

 十三が千春とともに病室に戻った。
 するとそこには美穂がいた。

「どこに行ってたの?」

「散歩だよ」

「そう……」

 美穂の顔がどこか寂しそうだった。
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