まっしろな遺書
 2015年5月25日


 昨日、また来てほしいと瓜と桃に言われたので、十三は今日も喫茶萌萌へ……

 萌がいなくなっても客は来る。

  萌ちゃんが居なくなったから忙しいだろうな。

 十三は、そう思いながら客を見渡した。

「十三さん、来てくれたんっすね……!」

 なのに、太郎は笑顔を絶やさない。

「十三さんたこ焼きは??」

 瓜が、そう言って十三の方を見つめる。

「持って来たよ」

 十三は、そう言って瓜にたこ焼きを1箱渡した。
 桃にもたこ焼きを1箱渡した。
 2人は嬉しそうにたこ焼きを頬張る。


「子供たちも落ち着いてきたようだね……」

「そうっすね……
 でも、夜はたまに泣いているっす。
 少しずつ少しずつ強くなってもらえたらいいと思うっす」

「親心ってやつか?」

「そうっすね」

 太郎は、そう言って十三のコーラーを出した。
 十三は昔から、紅茶とコーヒーは、苦手だったりもする……
 
  昔馴染みっていいな、そんなことさえも理解してもらえる。

 十三は、そう思いながらコーラーを口に運んだ。

「お!十三、来ていたのか……?」

 そう言って現れたのは、小太郎だった。

「いらっしゃい」

「ああ。
 今日も飯を食いにきたのだが……
 十三、美味そうなもの持ってるな?」

「あ、これか?
 これは、俺が作ったたこ焼きだよ。
 太郎にもおすそ分けで持ってきたんだ」

「そうか……」

「余分にあるから、お前も食うか?」

「いいのか?」

「ああ」

 十三は、たこ焼きを1箱小太郎に渡した。
 小太郎は、そのたこ焼きを食べて嬉しそうに言った。

「この味、山さんの味に似てる!」

「山さんって、山本さん?」

「うん。
 これに辛子を塗れば出来上がりじゃないかな?」

「本当に?
 ありがとう!
 俺はたこ焼き作りに戻るよ!」

 十三はそう言って、喫茶萌萌を出ると病院の調理室へと向かった。
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