まっしろな遺書

　2015年5月27日

　今日は、夢叶と学の結婚式。
　十三と銘と千春が結婚式に呼ばれ一緒に参加した。
　銘と千春は、万が一の為の待機でもある。

　山本は、車椅子。

　結婚式のスピーチと今まで見たことのない元気な歌声で歌を歌った。
　そして、学の手を強く握りしめた。

「不束な娘ですが、料理に洗濯……
　家事に関しては妻が叩き込んだのでとっても上手です。
　どうぞ、末永くよろしくお願いします」

　学は、山本の手を握り返す。

「任せて下さい！
　絶対に夢叶を幸せにしてみます！」

　山本は、涙を流しながら「お願いします」と言った。
　そして、結婚式が終わり帰り道のタクシーの中。

「銘ちゃん。
　最後にわがままを言ってもいいかな？」

「なんでしょう？」

「最後に自宅に向かいたいな……
　少しで良いから……ほんの少しで良いから……」

　それは誰の目にも限界だとわかった。

　　でも、今のうちに出来ることはやった方がいいだろう。
　　きっと山本は、後悔することになる。

　十三はそう思うと、ゆっくりと銘の目を見た。

「俺からもお願いします」

　銘は、ゆっくりと返事をした。

「わかりました」

　そして、山本の自宅には、山本を快く迎え入れてくれる人たちがいた。
　それは、山本の人柄の良さがそれを証明させた。

　ここで、やっと十三の出番が来た。

　そう、たこ焼きだ……

　結婚式では、作るタイミングが作れなかった。
　だから、山本が気を利かせてくれたらしい。

　十三は、たこ焼きを作り、山本からたこ焼きマイスターの称号を得た。

　でも、山本の症状は、見るからに悪い。
　夢叶と学は、新婚旅行にそのまま向かった。

　本当は婚前旅行だったらしいけど……
　結婚後になったので、新婚旅行になった。