まっしろな遺書
 2015年5月30日


 山本の体調が悪化した。
 十三と美穂は、恵子に呼ばれ、山本の部屋に向かった。

「山本さん?」

 山本は、返事をしない。

「耳だけは、最後まで聞こえるみたいだから、話しかけてあげて下さい……」

 恵子が、涙目で俺に言った。

「はい……」

 俺と美穂は頷いた。

「山本さん、俺、山本さんに教えてもらったたこ焼きで、この病院の子供たちの笑顔を護ります」

 山本さんの指が、ピクリと動く。

 聞こえてる。
 届いている。

 十三は、さらに話し続けた。

「俺、頑張っていきますから、山本さんも生きて下さい!」

 十三の目から、自然と涙が零れた。

「お父さん!」

 夢叶が、荷物を持ったままこの病室に入って来た。
 涙をボロボロと零している。

「お父さん、私帰って来たよ!」

 夢叶が、そう言うと山本は、目をうっすらと開ける。
 そして、目が一瞬だけ笑う。

「おかえり」

 山本は、そう言って一呼吸空気を吸うと逝ってしまった。
 機械音だけがその部屋に鳴り響く。

 銘が、涙をこらえながら皆に山本の臨終の報告をした。

 夢叶と恵子は、その場で泣き崩れ。
 美穂も涙をこぼした。

 自分が犯した自殺と言う行為。
 それの重さがずっしりと十三の体にのしかかる。

 十三は心に深く誓った。
  山本さん、俺は生きるよ……
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