まっしろな遺書
 2015年5月31日


 今日で、5月が終わる。
 その終わりは、雨で締めくくられる。

 今日は、山本のお通夜がある。

  死とは、何だろうか?

 十三は考える。
 萌の時にも思った。
 山本は、十三に対しても優しかった。。
 だから、山本への感謝の気持ちでいっぱいだ。

  俺は、これからどう生きるべきなのだろう?

 十三は、悩む。

 病院は、変わらずいつもと同じ静けさと看護師が忙しそうにしている光景が眼に映る。
 俺は、いつも山本が座っていたベンチを傘をさして、じっと見つめた。

「十三……
 風邪引くよ」

「うん」

「今日は、ちょっと寒いね」

「うん」

 美穂の言葉が耳に入ってこない。

「十三……」

「ん?」

「子供たちも元気がない見たい」

「そうだろうね。
 山本さん、子供たちにも人気があったしね」

「うん。
 山本さんとの約束覚えている?」

「約束?」

「子供たちの笑顔を護るって約束したでしょ?」

「そうだね……」

「だったら、護らなくちゃ」

「え?」

「護るんでしょ?
 子供たちの笑顔……」

 山本との約束……

 十三は、大きく息を吸い込んだ。

「俺、明日のお葬式でたこ焼きを作るよ!」

「うん!」

「外出許可は……」

「うん!
 一緒に取りに行こう!」

 十三たちは、外出許可を貰った。
 そして、調理室で材料を用意した。

「さぁ、たこ焼きを作るぞ!」

 十三はそう言って気合を入れた。
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