まっしろな遺書
 2015年6月6日


 十三の脚は運動していないのに筋肉痛だった。
 しかし、運動不足が原因と思い銘には相談はしなかった。

  散歩に出るか……

 十三は、そう思うとベッドから降りて部屋を出ようとした。
 十三が、扉を開こうとした時、十三よりも早く部屋の扉を開いた。
 十三の手は、そのまま前に向かい柔らかい感触が俺の手を刺激する。

「あ……」

「あ……」

 女性の声が俺の耳に入ってくる。
 十三の視線は下のまま……
 上を向くのが怖い。
 そんなとき、十三の頭のなかにBGMが流れる。

  上を向いて歩こうよ。
  涙がこぼれないように。

「いつまで、触っているのかなー?」

 声が、怒っていない。
 十三は、震えながらも勇気を出して顔をあげた。
 そして、顔を見る。
 顔を少し赤らめた美穂がいた。

「なんだ、美穂か……」

「誰だと思っていたの?
 胸の感触で私だとわかんなかった?」

 美穂が、ちょっと悲しそうな顔で言う。

「触ったことないから、わかんないよ」

「揉みたければ揉んでいいよ」

「あ、ごめん」

 俺は、すぐに手を離した。

「はぁ。
 別にいいんだけど……
 何処に行こうとしてたの?」

「病院の庭を散歩しようかなと……」

「じゃ、私も散歩するー」

 美穂が、そう言って十三の手を握り締める。
 美穂は、こういうベタベタするのは、嫌いだったが、十三は深く考えなかった。

「ああ、行くか」

 十三は、美穂とゆっくりと歩き出した。
 
  こういう散歩もいいかもしんないな……

 十三は、そんなことを考えた。
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