まっしろな遺書
 2015年6月7日

 十三は、朝の6時前に目が覚める。
 もう一度寝ようとしてもなかなか寝付けず。
 目を開ける。

「散歩でもするか……」

 十三は、熟睡している美穂を起こさないように部屋を出た。

 6時前。
 待合室には、誰もいない。

 まだ6月、朝は少し冷える。
 十三は、はペットボトルの暖かいお茶を買った。

 それを口に運ぶ。
 ほんのりと体が、暖かくなった。
 十三が、まったりとお茶を飲んでいると充が、近づいて来た。

「どうした?
 眠れないの?」

 十三は、充に尋ねた。

「はい。僕、13日に手術なんです……」

「そっか。
 頑張れよ」

「はい……」

「ジュース飲むか?
 奢ってあげるよ」

 俺は、ゆっくりと立ち上がった。

「ありがとうございます」

 充が、苦笑いを浮かべる。

「元気ないね?
 手術が成功したら退院できるんでしょ??」

 十三は、そう言って自販機にお金を入れる。

「成功はないんです。
 ただ、死ぬのを伸ばすだけ……」

 充は、そう言ってつらそうな顔をした。

「そっか……」

「あ、でも、元太君は助かりますよ?
 あの人は、盲腸が悪化して、その治療で入院しているだけですから……
 だけど、僕と歩ちゃん愛ちゃんは、違う。
 みんな重度の白血病なんです……」

「そっか……
 ところで、隼人くんは何で入院しているの?」

「あの人は、事故で左目を失って入院しているらしいです。
 噂だと事故じゃなく、無理心中らしいです」

「え?」

「車の中で、ご両親が妹さんと一緒に練炭自殺。
 隼人君が、たまたま車の外に出ている時でした。
 車に、練炭の火が燃えうつり爆発したそうです。
 引き取り手が居ないから、この病院に残っているみたいです」

「みんな色々あるんだな……」

「はい……」

 十三の胸がは、少し痛くなった。
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