まっしろな遺書
 2015年6月12日


 明日は、充の手術日。
 緊張からか、充の元気が、いつもより一層ない。

 充は、無言でバケモンを俺の部屋でやっている。
 他の子供たちもほぼ無言だ。
 元太君は、いない。
 学校で授業を受けている。

 院内学級も今日は中止。
 はるかも十三の部屋に来てバケモンをやっていた。

 十三には、それが少し意外だった。

「なぁ、みんな、相談があるのだけど……」

 十三が、そう言うとみんなの視線が俺に集まる。

「11月17日にしし座流星群が見れるのだけど……
 みんなで、見ない?
 もちろん元太君も誘ってさ」

「流星群って何?」

 愛がくいつく。

「流れ星がいっぱい見れるんだよ」

 十三も詳しくは知らないため、適当に答えた。

「流れ星……
 願い事叶うかな?」

 歩が、笑う。

「叶うさ……」

 十三がそう言うと愛が笑う。

「じゃ、私は、充君の手術が成功しますように!
 って願う!」

 すると充が、笑う。

「その頃には、手術は終わってますよ」

 十三は、久しぶりに充の笑顔を見た気がした。

「充君。
 絶対に見ような!」

「でも……」

「ゆびきりだ!」

 十三は、強引に充とゆびきりをした。

「十三さん、まるで子供じゃないですか……」

「俺は、子供だぞ。
 まだ28歳だからな」

「十分大人です」

 充が再び笑う。

「みんなも約束だからな!」

「うん!」

 愛と歩が頷く。

「隼人君も一緒だぞ?」

「……うん」

 隼人もどこか元気がなかった。

  とりあえず、約束はした。
  久しぶりに充君が笑った。
  それだけで、いい。
  あとは祈るだけだ。
  充君の手術が成功することを……

 十三は、そう思うと小さな希望を見いだせた気がした。
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