まっしろな遺書
 そして、暫くすると覆面を被った子どもたちが十三の部屋に入ってくる。

「うん?」

 十三は、首を傾げた。

「お兄さんを千春ちゃんを口説いた罪で逮捕する!」

 聞き覚えのある声だった。
 他の子どもたちも声をそろえてこう言った。

「逮捕する!」

「お兄さん!
 彼女がいるのに、千春ちゃんを口説いたらダメだよ!」

 その声は紛れも無く歩のものだった。

「歩ちゃん何しているの?」

「歩は、歩じゃないよ。
 アユーミンだよ」

「歩ちゃん名乗っちゃっているよ」

「え?」

 十三は、ゆっくりと歩ちゃんに近づき覆面を取った。

「はい。
 僕の勝ち」

 十三が、そう言うと歩は照れ笑いを浮かべながら言った。

「お兄さんずるいよー」

「で、どうしたんだい?」

「昼間は、お兄さん一人で寂しいでしょう?
 だから、病院で友達を作った方が良いと思って、私の友達を連れて来たよ」

 歩は、楽しそうにそう言った。
 そして、歩は言葉を続けた。

「んっとね、このデカいのが元太君」

「おう」

 元太は、低い声でそう言った。
 体が大きいいが歳は歩と同じくらい。
 体重は、倍以上あるようだった。

「んで、こっちが……」

「充です。
 よろしくおねがいします」

充は、そう言うと軽くお辞儀をした。
こちらの子は、元太君と違い痩せている。
歳は、歩ちゃんと同じくらい。

「そっか……
 みんな、元気で何よりだ」

 十三が、そう言うと元太から鋭いツッコミを受ける。

「元気じゃないから入院してんだよ」

 元太がそう言うと歩と充が笑う。
 十三は、暫くこの小さなテロリストたちと雑談をかわした。
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