まっしろな遺書
 2015年6月14日


 命というモノは、どうしてこんなに儚いのだろうか?
 昨日の充の手術は、成功とは言えなかった。

 4時間の予定の手術は、12時間かかった。
 12時間かかった結果……

 充の脊髄移植には、成功した。
 みんな一安心した。
 だけど、その後すぐに拒絶反応が現れ充は、亡くなった。

  さよならも言えない別れほど辛いモノはない。

 それを知らされた、十三と美穂。
 歩と愛、元太は涙を流した。

「なんなんだよ!
 ドナーが見つかって助かるんじゃなかったのかよ!」

 元太が、銘の方を睨む。

「ごめんなさい……」

 銘は、涙を流して謝った。
 銘の責任ではないのは、みんなわかっている。
 だけど、その悲しみは誰かにぶつけなければ気がすまなかったのだろう。

「みんな、悲しまないでくれ……」

 充の父親が、みんなに声を掛ける。

「でもよ……」

 元太が、充のお父さんの方を見る。

「運命だったんだ……
 これは、あの子の運命だったんだよ。
 むしろ苦しまず逝けただけでも、充は幸せだったのかもしれない……」

 十三は、言葉が出なかった。
 充の父親は、言葉を続ける。

「だから、みんなも顔をあげて元気を出してください」

 隼人は、黙って空を見上げる。

 外は、快晴。
 いい天気だ。

「隼人!お前は、悲しくないのかよ!」

 涙、ひとつ零さない隼人に元太が睨む。

「悲しいよ。
 でもね、もう泣かないと決めたんだ」

 隼人は、愛の頭を撫でる。
 十三の病室は、小さな泣き声だけが響いた。

「なんなんだよ……
 それ……」

 元太が、再び泣した。

 あまりにも悲しい日曜日。
 突然の別れに十三たちは、悲しむことしかできなかった。
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