まっしろな遺書
 2015年6月20日

 今日は、土曜日。
 いつもなら、子供たちで賑わう十三の部屋……
 今日も、隼人君と愛ちゃんしか来ない。

「元太君は、そっちには、遊びに来ているの?」

 十三は、隼人に尋ねた。

「充君んが亡くなってからは、来てないよ」

 隼人君、首を横に振りながら答える。

「そっか……
 歩ちゃんは、元気にしてる?」

 十三は、愛に尋ねる。
 愛は、つらそうな顔をして首を横に振る。

「じゃ、3人で行くか……」

「行くって何処へ……?」

 隼人が、目を細める。

「歩ちゃんの病室へ……」

「そう……」

 隼人は、ゆっくり立ち上がると愛も立ち上がった。

「案内よろしく」

 十三は、そう言うとふたりも立ち上がる。
 ふたりは、十三を連れて歩ちゃんの病室へと向かった。
 歩は、大部屋。
 そこには、何人かの子供たちもいたが、知らない子供たちばかりだった。
 その中で、ひとり人、横になっている女の子がいた。

「歩ちゃん……」

「あ、お兄さん」

 歩は、つらそうに体を起こす。
 眼の下にはクマが出来ている。
 朝食には、手はつけていない。

「歩ちゃん、ごはんを今日も食べてないの?」

 愛が、心配そうに尋ねる。

「食欲ないんだもん」

「眠れてる?」

 今度は、十三が尋ねる。

「眠るの怖いんだもん」

「怖い?」

「眠ったまま起きれなかったらどうなるの?
 死ぬんだよ?私、死にたくないよ」

「大丈夫だから……
 少し休んだ方が良いよ。
 んで、ご飯は食べよう」

「でも……」

「人間、飲まなくても食べなくても寝なくても死んじゃうんだ。
 少しでも生きたかったら食べよう寝よう」

「お兄さんが、そう言うのなら……」

 歩は、朝食に手を付けて全て食べた。

「偉いぞ」

 十三は、歩の頭を撫でた。
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