まっしろな遺書
 2015年6月24日


 美穂は今日、休暇をとった。
 そして十三にこう言った。

「十三は、ずっと病院に居すぎ!
 もっと外に出なくちゃ!」

 そして、先ほどまで十三は、近所の公園を美穂と散歩していた。

 散歩の帰りに昼食の巻き寿司を買って帰った。
 十三たちは、病室に戻ると巻寿司を食べ終えたころ、隼人と愛が部屋にやって来た。

「あ、十三さん、帰ってきてる」

 愛が、嬉しそうに笑う。

「なに?
 どうした?」

「歩ちゃん、目を覚ましたよ」

 愛ちゃんの一言で俺は、俺の心はぱっと明るくなる。

「十三、お見舞い!」

 美穂は、そう言うと十三たちは、速足で歩ちゃんの部屋に向かった。
 歩の体はチューブに繋がったままでうっすらと目が明いていた。

 この前と違う。
 稲穂さんも、つらそうな目で歩ちゃんを見ている。

「お兄さん……」

 歩の声が、今にも消えそうだ。

「ほら、十三、何か喋って……」

 美穂が、十三の背中を押す。

「えっと……」

 十三は、戸惑う。
 何を言ったらいいかが、わからない。

「十三さん」

 愛が、そう言ってお寿司についていたワサビを俺に渡す。

「ギャグだ!
 面白いギャグをやるのよ!」

 美穂が、そう言ったので十三は一生懸命考えた。

「今日は、一段と冷えますね。
 わー。さびー」

 沈黙する一同。
 ただ、歩だけが、ニッコリと笑ってくれた。

「お兄さん、変なのー」

 ただ、その笑顔が心に穴をあけた。
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