まっしろな遺書
 2015年6月25日


 今日は、いい天気だったので、十三は病院内の本屋に向かい……
 マンガを大人買いした。
 約6000円した。

 少し落ち着いてから本を読もうと十三は思った。
 歩は、絶対安静。
 十三は、少し心配だったため、歩の部屋に向かった。
 歩は、静かに眠っていた。
 稲穂が、歩の手をぎゅっと握りしめていた。

「昨日の夜、ずっと貴方の話ばかりをしていたんですよ」

 稲穂が、そう言って十三の方を見る・

「俺の話ですか?」

「はい」

「歩、貴方のことが好きみたいです」

「え?」

「初恋ですね……」

 稲穂が、小さく笑った。

「そ、そんな……」

「私の初恋の人も年上の人だったんですよ?」

「え?」

「優しくて暖かくてみんなに好かれて……」

  俺とは、正反対の人間だな。
 十三は、そんなことを思った。
 ずると稲穂が言葉を続ける。

「そう、貴方のような人です。」

 十三は、すぐに反論した。

「俺は、そんな好かれる人間じゃないですよ」

「そうですか?」

「体中にシミが、あるでしょ?
 これ、小さいころからあってよく虐められて泣いていました。
 人から嫌われてばっかの人生ですよ。
 だから、みんなには好かれてません」

「そうですか?
 看護婦さんの中では、子煩悩で優しくて人気があるみたいですよ?」

「誰が、そんなことを……」

「千代田さんです」

「あの人か……」

「私も十三さんのこと嫌いじゃないです。
 美穂さんがいなかったら口説いてますよ」

「え?」

 稲穂は、優しく微笑む。
 その表情に十三は、一瞬どきりとしてしまった。
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