まっしろな遺書
 2015年6月26日

 十三はふとため息をつく。

「ため息をつくと幸せが逃げちゃうよ」

 美穂が、そう言って笑う。

「違うよ、美穂。
 俺は、ため息をつくことにより負のオーラを吐きだし、幸せのオーラを取り入れようとしているんだ」

「何それ……」

 美穂が笑う。

「さて、ちょっと歩ちゃんの様子を見てくるよ」

「あ、私も行くー」

 十三と美穂は、一緒に歩の病室に向かった。
 部屋をノックして、返事が返って来たので入る。
 稲穂が、辛そうに歩を見つめている。

「歩ちゃん、遊びに来たよ」

 歩の手が、ピクリと動く。

 でも、目は開かない。

「歩ちゃん、眠っているみたいだね……」

 稲穂が、耳元で囁く。

「昨日の深夜、また急変して意識がなくなりました……」

「え?」

「もう、意識は回復しないそうです……」

「……え」

 十三たちは、言葉を失った。

「今は、延命治療……
 奇跡が、起きない限り意識は戻らないでしょう。
 でも、声を掛けると手がピクリと動くんですよ」

 稲穂が、そう言って優しく歩ちゃんの頭を撫でる。
 十三は、ただそれを見てることしかできなかった。
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