まっしろな遺書
 2015年6月29日

 今日の昼間に歩のお葬式が行われた。

 十三は、葬儀に行く前に近所のスーパーの中にある散髪屋に行ってきた。
 15分1000円で、安い。
 髪の毛も、長い間切っていない。
 だから、伸び放題のぼっさぼさ……
 なので、葬儀の前に切ってもらった。
 かなり、すっきりした。
 しかし、十三の心の中はからっぽ。

 何にもない。

 ただ、ひたすらに空っぽだったのだ。

 歩には、学校の友達はいない。
 幼稚園に行く前から闘病していた。
 だから、病院外の友達はいない。

 歩は、前から言っていた。

「学校に行きたい」と……

 十三は普通に学校に行って、バカやって教師に怒られていじめられて泣いて……
 それの繰り返しだった。
 だから、十三にとって学校は、嫌な場所でもあった。
 成績の悪い十三は、家でも居場所はなかった。
 家では、煙たがられいい扱いを受けてこなかった。
 居場所を失い、美穂が居場所になってくれた。
 そして、美穂までもを失ったと思い込んだ十三は、自殺未遂した。

 しかし、歩は生きたいと願っていた。
 歩だけじゃない充だってそうだ。
 学校に行って、勉強して、バカやって教師に怒られて……
 そんな世界を経験したかったと思う。

 十三は思った、自分は何をやっているのだろう?
 自分にに出来ることは何?

  なんにもない、なにもできない。

 歩が、火葬場に向かう……
 歩が入院する前に使っていたお茶碗を割った。
 お茶碗を割る稲穂の手が震えていた。

 十三は、かけてあげれる言葉もない。
 そもそも言葉が、見つからない。

 こんな時、なんて声を掛ければいい?
 十三は、散らばった茶碗を眺めることしかできない自分に苛立ちを覚えた。

 元太や愛が、しきりに歩の名前を呼んで泣いている。
 隼人は、下唇を噛み涙を堪えている。

 歩が、火葬場へと向かう黒い車……
 その車が、クラクションを鳴らす。

 十三は、この音が大嫌いだ。
 心が、痛くなり泣きそうになる。
 でも、涙が出ない。

 泣きたいのに零れない涙……
 正直つらい。

 悔しくて悔しくてつらい。

 自分は、歩に何をしてあげれた?
 一緒にバケモンで遊んで、また会おうねと手を振ってわかれる。
 もう、その光景を見ることが出来ない。

 十三は常々思う。
 自分は、無力だ……と
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