まっしろな遺書
 2015年7月3日


 当てのない旅……
 退屈にさせないようにと一生懸命動く十三

 美穂は、嫌な顔をひとつせず十三についていった。
 十三は、車の運転ができたならドライブに誘っただろう。
 でも、十三はペーパーでゴールド。
 運転は、もうできない。

 美穂は、運転できる。
 でも、美穂に運転してもらうのは、気が引けた

 だから、十三たちは京都の街を途方に歩く。
 電車に乗りバスに乗り寺めぐり。

 ひたすら色んな寺をさまよった。
 そして、今。
 少し早い夕食をホテルの屋上で食べている。

「十三は、観光がしたかったの?」

 美穂の質問に十三は、戸惑う。

「んー。
 美穂と色んなところを見てみたかったんだ」

「ふーん。
 今日は、オオカミになるの?」

「オオカミ?」

「ホテルに来て食事するってことはそういうことじゃないの?」

「あー。
 それは、ない」

「そっか」

 美穂は、少し残念そうな顔をした。

「なんていうかさ……
 いい加減な気持ちでしたくないんだ」

「真面目なんだね」

「んー。
 美穂はどうなの?
 中途半端な気持ちで俺に抱かれて嬉しい?」

「嬉しくはないけど……
 ずっと一緒にいるのにちっとも抱いてくれないんじゃ女としての自信を失うかな」

 美穂が、笑う。
 苦笑いだ。

 十三は、抱けるのなら抱きたいかった。
 もうすぐ30歳。

 そろそろ捨てなければいけないものでもあると思う。
 でも、焦って捨てていいことは、あるのだろうか?
 答えは、誰にもわからない。

「そういうもん?」

「うん」

「でも、きちんとお互いのことを好きになってからしようよ」

「うん。
 そうだね」

 美穂の表情が少し和らぐ。
 それは、安堵の表情だろうか……?
 それは十三には、わからない。
 なにもわからない。
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