まっしろな遺書
 2015年7月5日


 美穂は仕事に行き、隼人たちは院内学級で授業を受けている。
 院内学級も、十三が知っている顔は、隼人と愛だけになちゃったな。
 人数も結構減った感じもする。
 これが、いいことなのか悪いことなのかは、わからない。
 元太のように退院したのか、歩や充のように亡くなったのか……

 元気になって退院しているのならいいな。
 十三は、そんなことを思いながら院内学級の教室から離れた。

 待合室に行くと千代田と千春ん銘が、待合室で休憩していた。

 十三は、声をかけてみることにした。
 聞きたいことがあったからだ……

「あ、おはようございます」

「十三さん、おはよー」

 千春が、元気に手を振る。

「あのちょっと尋ねたいことが……」

「なんでしょうか?」

 銘が、首をかしげる。

「望遠鏡とかって、ありますか?」

「望遠鏡?
 あるけど何に使うの?」

 十三の質問に千代田が答える。

「17日に流星群が、見れるみたいなのでその準備がしたいのです」

「なるほど……
 そういえば、愛ちゃんが楽しみにしてるって言っていたような」

 千春が、にっこりと笑う。

「そっか……」

「愛ちゃん。
 流れ星にお願いしたいことがあるんだって」

「へぇ……」

「恋の悩みだったりして?」

 千春が悪戯っぽく笑う。

「恋は、まだ早いんじゃない?」

 俺が、そう言うと千代田が答える。

「女の子の初恋は早いよ。
 しかも年上の場合が多いわ」

「え?
 愛ちゃんが好きな人って隼人君じゃないんですか?」

「私の見立てだと、もう1人いるわね」

「誰?」

「そういうのは聞くのはダ・メ・だ・ぞ」

 千春が、そういうと十三の鼻をつついた。

「じゃ、私たちは仕事があるから行くね。
 望遠鏡の方は、レンタルの申請しとくから……」

 千春たちは、そう言って十三に手を振ってその場を離れた。

  女の子の初恋って早いんだな。
  俺の初恋はいつだろう?

 十三は、そう思ってため息を付いた。
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