まっしろな遺書
 2015年7月7日


 今日は、たこ焼きパーティー。
 十三が準備をしていると太郎がやってきた。

「ん?
 まだちょっと時間が早いよ」

「準備を手伝おうと思って来たんっす」

「え?
 店は?今が、稼ぎ時じゃ……?」

「今日は、臨時休業っす」

「いいの?」

「はい」

「ありがと」

「いえいえ、瓜と桃も学校が終わったら来るっす」

「そっか……
 久しぶりだから隼人君も愛ちゃんも喜ぶと思う」

「はい。
 瓜と桃も2人と遊ぶの楽しみにしてるっす」

「そっか。
 まぁ、子供は子供同士仲良くしないとね」

「そうっすね。
 んで、十三さんに話があるっす」

「どうした?」

「美穂さんのことっす」

「小太郎から何か聞いたの?」

「いえ、常連客の中に以前の美穂さんのことを知っている人がいまして……」

「じゃ、あの美穂が、偽物だってことも?」

「はい。
 中には、美穂さんの葬儀に岩手県まで行ったって方もいるっす」

「岩手?」

「はい、美穂さんの実家は岩手らしいっす」

「そっか……」

「十三さんの方では、気になることなかったすか?」

「美穂の父親の仕事がね、変わっているんだ。
 最初は、満点堂の社長だって言っていたのにこの間は、病院を経営しているって言っていたんだ」

「どうして、そんな嘘をつく必要があるんでしょうね……」

「それが、わからなくて……
 小太郎や小太郎の紹介で知り合った御幸さんに調べてもらっているんだけど……」

「俺、あの美穂さんの正体わかるかも知れないっす」

「え?」

「美穂さんには、双子の妹が、いるっす」

「ああ、それは聞いたことあるような……」

「はい、名前は杉並 志穂さん。
 満点堂の大阪支店の副店長をやっているっす……」

「じゃ、やっぱりあの美穂は……」

「恐らく志穂さんでしょうね……」

「そっか……」

  あの美穂は美穂じゃないんだ……
 十三は、そう思うと少し落ち込む。

「で、どうするんすか?」

「え?」

「一応、だまされていることになるっすよね?」

「悪意は感じられないんだ……
 だから、このまま暫くは、だまされとく」

「そうっすか……」

 太郎は、少し腑に落ちないような顔をしていた。
 しかし十三は、これでいいと思った。
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