まっしろな遺書
 2015年7月8日


 十三は。少し外を歩く。

 病院内にある公園に向かえば、子供たちが賑やかに絵を描いている。
 その中には、隼人や愛の姿があった。

「十三さんだ……」

 愛が、十三に気付くと俺の方に小走りでやってきた。
 隼人は、ゆっくりと近づいてくる。

「暇なんだね」

 隼人が、苦笑い。

「入院中は、暇なもんだよ」

 十三も苦笑いを浮かべる。

「そんなもん?」

「うん、そんなもんだよ」

「十三さん、暇なの?」

 愛が、目をキラキラと輝かせる。

「まぁ、そうだけど……」

「じゃ、十三さんも絵を描こう」

「え?」

「その『え?』は、『絵』ともじってますか?」

 そう言ってはるかが、お絵かきセットを持って現れる。

「もじってません……」

「とりあえず、十三さんも『ひと描き行こうぜ!』」

 はるかが、嬉しそうに笑う。

「はるか先生、それ少し古いし何か違う……」

「要は、気合よ!気合!
 気合があれば、何でもできる!」

「本当に気合だけで何でもできますか?」

「え?」

 はるかが、困った表情を浮かべる。

「いえ、何でもありません」

「相談なら、いつでも聞きますから、いつでも言ってくださいね!」

「はい、ありがとうございます」

「んじゃ、絵を描きましょう!」

 はるかが、そう言って十三にお絵かきセットを渡してくれた。
 とりあえず、十三は颯爽と絵を描いた。

「うん。
 とっても下手だ……」

 十三は、小さく笑った。
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