まっしろな遺書
 2015年2月14日

 十三の部屋には、歩が書いてくれた絵を飾っている。
 似ているかどうかはわからない。
 そして、チョコレートも貰った。
 チョロルチョコだった。
 だけど、俺は嬉しかった。
 
 朝起きると机の上に手紙とチョコが置かれていた。
 美穂である。

「忙しい中ありがとう」

 俺は、そのチョコに手を合わせた。
 そして、申し訳無さでいっぱいになった。
 自分の入院費も稼いでもらってるのだろう。
 そう思うと胸が痛くなる。

「絵、飾られているんですね」

 千春が、そう言って十三の点滴の準備を済ませる。

「はい。
 部屋に飾るものが欲しくて……」

「そうですか。
 きっと喜びますよ。
 歩ちゃん明日手術なんです」

「白血病だっけ?」

「はい」

「元気ないけどなんかあった?」

「難しいらしいです」

「大丈夫だよ。
 歩ちゃんあんなに元気でいい子なんだし。
 神様はきっと見てくれているよ」

「本当はね。
 外で遊ぶのもダメなんだって……」

「そうなの……?」

 十三は驚いた。
 多少なにかれ病気があるから入院しているのだろうと予測はついていた。
 でも、ショックだった。

「もしかして、あそこにいた子どもたちも同じように悪いの?」

 俺が、そう尋ねると千春はコクリとうなずいた。

「全員が全員って訳じゃありませんが……
 ここは、難病と言われた人が集まる場所でもあるのです。
 みんな生きたい人たちばかりなんです」

 十三は言葉を失う。

「そっか……
 俺は、自殺をして生きることを放棄してしまったんだな」

「そうですよ。
 生きないとダメです」

「でも、病院て思ったより暇なんだね……」

「知ってます?
 暇って最高の贅沢なんですよ?」

「そんなの初めて聞いたぞ……」

「えへ♪
 お爺ちゃんの受け売りです♪」

 千春は、そう言って笑いながら部屋を出た。
 十三にまた暇が訪れる。
 そして、枕に顔を埋めた。
 1時間、2時間、3時間。
 十三は何をするでもなく何かを待っていた。
 でも、何も訪れず時間だけが過ぎていった。
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