まっしろな遺書
目を覚ませば美穂がいる。
そんな日常が平常になりつつある日。
十三にとって美穂が目を覚ますまで寝顔を見る。
それも日常だった。
いつものように十三は美穂の顔を見つめる。
すると突然美穂の目が開く。
十三の体がビクリと動く。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「あー。
わかったー。
キスしたいんでしょ?」
「へ?」
十三は、その言葉に驚く。
そんなことをすれば殴られる。
「キスしてもいいよ」
「ええ?」
美穂は、戸惑う十三を見て小さく笑うとキスをした。
十三はふと疑問に思った。
「タバコの臭いがしないみたいだけど……」
「タバコ……
止めたんだ」
「いつ?」
「一昨日」
「そうか……」
タバコの臭いが、そんなに早く消えるものなのかと十三は疑問に思った。
「タバコ吸った私の方が好き?」
「いや、吸わないほうが健康でいいんじゃないかな?」
「うん」
十三には美穂のこと以外にもうひとつ疑問に思うことがあった。
「なぁ、俺はどうなるんだ?」
「うん?」
「自殺未遂だけでこんなに長い間入院してるしさ……
すぐに退院できないのは理由があるんだろ?」
十三の声は消え入りそうだった。
ただ怖かった。
美穂は少し考えたあとゆっくりと口を開けた。
「十三はね、癌なの。
それも末期の……」
「え?」
十三の頭のなかがまっしろになる。
癌?
まさか自分が?
十三は、恐る恐る美穂に尋ねる。
「どこに出来たの?」
「脳……」
「死ぬの……?」
「わからない」
十三は怖くなる。
自殺しようと思ったはずなのにいざ病気で死ぬかもしれないと思うと怖くなった。
そして思った。
自分で死ななくても死ねたのか……と
「死なないでね」
美穂が、十三の体を抱きしめ耳元で言った。
「どうせほっといても死ぬのだろ?
なのなら、あえて自分からは死なないよ」
「生きてよ」
「頑張る」
「うん。
頑張って……」
十三の疑問がひとつ晴れた気がした。
美穂が優しいのは、自分が癌なのだからだ。
死ぬから優しいんだ。
そう思うと少し怖くなった。
怖くなり美穂の体を抱きしめる。
ただ、人のぬくもりが欲しかったのだ。
そんな日常が平常になりつつある日。
十三にとって美穂が目を覚ますまで寝顔を見る。
それも日常だった。
いつものように十三は美穂の顔を見つめる。
すると突然美穂の目が開く。
十三の体がビクリと動く。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「あー。
わかったー。
キスしたいんでしょ?」
「へ?」
十三は、その言葉に驚く。
そんなことをすれば殴られる。
「キスしてもいいよ」
「ええ?」
美穂は、戸惑う十三を見て小さく笑うとキスをした。
十三はふと疑問に思った。
「タバコの臭いがしないみたいだけど……」
「タバコ……
止めたんだ」
「いつ?」
「一昨日」
「そうか……」
タバコの臭いが、そんなに早く消えるものなのかと十三は疑問に思った。
「タバコ吸った私の方が好き?」
「いや、吸わないほうが健康でいいんじゃないかな?」
「うん」
十三には美穂のこと以外にもうひとつ疑問に思うことがあった。
「なぁ、俺はどうなるんだ?」
「うん?」
「自殺未遂だけでこんなに長い間入院してるしさ……
すぐに退院できないのは理由があるんだろ?」
十三の声は消え入りそうだった。
ただ怖かった。
美穂は少し考えたあとゆっくりと口を開けた。
「十三はね、癌なの。
それも末期の……」
「え?」
十三の頭のなかがまっしろになる。
癌?
まさか自分が?
十三は、恐る恐る美穂に尋ねる。
「どこに出来たの?」
「脳……」
「死ぬの……?」
「わからない」
十三は怖くなる。
自殺しようと思ったはずなのにいざ病気で死ぬかもしれないと思うと怖くなった。
そして思った。
自分で死ななくても死ねたのか……と
「死なないでね」
美穂が、十三の体を抱きしめ耳元で言った。
「どうせほっといても死ぬのだろ?
なのなら、あえて自分からは死なないよ」
「生きてよ」
「頑張る」
「うん。
頑張って……」
十三の疑問がひとつ晴れた気がした。
美穂が優しいのは、自分が癌なのだからだ。
死ぬから優しいんだ。
そう思うと少し怖くなった。
怖くなり美穂の体を抱きしめる。
ただ、人のぬくもりが欲しかったのだ。