まっしろな遺書
 2015年2月17日

 十三が目を覚ますとそこには、美穂の姿はなかった。
 時計の針を見ると9時を過ぎていた。

「仕事に向かったんだね……」

 十三はため息をついた。

「ため息をつくと幸せが逃げちゃうんだよ」

 歩の声が聞こえた気がした。
 十三は周りを見たが、どこにも歩の姿は見えなかった。

「そう言えば、歩ちゃんの手術成功したのかな?」

 十三は、そうつぶやくと学童教室に向かった。


 学童教室では、元太や充たちが授業を受けていた。
 そこに歩の姿はなかった。

「やっぱ、いないか」

 十三が、そうつぶやく。
 すると授業をしていた女教師が十三の存在に気づいた。

「何か御用ですか?」

 女教師は、警戒しながら十三にそう尋ねた。

「いや、なんでもありません。
 歩ちゃんって子が、遊びに来てほしいと言っていたので遊びに来ました」

「歩ちゃんのお知り合いですか?
 歩ちゃんは、今、病室に居ますよ?」

「手術は、成功したのですか?」

 女教師は、首を横に振った。

「今は、なんとも言えません」

「そうですか……」

 女教師は、十三を睨む。

「って、貴方は誰ですか?
 あまり見かけない顔ですが……
 もしかして、ロリコン?」

 女教師の顔が、青ざめる。

「俺は、この病院の入院患者です。
 たぶん、ロリコンじゃないです」

 十三は、ため息を吐く。

「あ、患者さんですか……?」

「はい」

「見かけない顔だったので、すみません」

 女教師は、申し訳なさそうに謝る。

「いえ、気にしないでください」

「あ、私は、この病院で院内学級の教師をやっている西田 はるかです。
 みんなからは、はるか先生と呼ばれています」

「あ、俺は、詩空 十三です」

「はるかせんせーい」

 生徒が、はるか先生を呼ぶ。

「で、では、私は授業があるのでこれで……」

 はるかは、授業に戻った。
 十三もこれ以上情報が得れないと思ったため自分の病室へと戻った。
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